本日は、
一級建築士の製図試験における
階段の考え方を一挙に整理します。
製図試験は、時間との勝負。
限られた試験時間の中で、毎回ゼロから
階段の計画をするのは現実的ではないです。
階段はパターンを頭に入れてしまって、
息をするのと同じくらい簡単に、
瞬殺で計画できるようにしたいところ。
階段の形状や段数の考え方が
こんがらがっている方も、
今回の記事で頭の中を
整理していただければと思います。
階段のパターンは挙げだすとキリがありませんが、
今回は利用者用・管理用の階段それぞれ3パターンに絞りました。
問題を解く上で実際に使えるもの、
あらゆる問題に対応できるものに厳選しています。
極力覚える量を減らし、
効率よく学習を進めていきましょう。
- 利用者用、管理用の階段の寸法を押さえる
- 利用者用階段を3パターン覚える
- 管理用階段を3パターン覚える
利用者用の階段
利用者用の階段の寸法
まずは基本として、
法律に定められた階段の寸法を押さえましょう。
階段の寸法は
規模や用途などに応じて様々な規定がありますが、
今回は一級建築士の製図試験対策ということで、
試験で使う寸法のみ解説することにします。
はじめに利用者用の階段です。
利用者用の階段は、
不特定多数のお客さんが利用する階段であることから、
バリアフリー法の基準を満たして計画する場合が多いです。
バリアフリー法の正式名称は
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」です。
この法律で定められている
「建築物移動等円滑化誘導基準」という
基準で定められた寸法を採用します。
(漢字だらけで長ったらしいですね)
具体的な数値は次の通りです。
蹴上げ(R:Rise)は16cm以下、踏面(T:Tread)は30cm以上。
必要な段数
続いて、階高により必要な段数を計算します。
建築士試験において使用する階高は4〜6m程度です。
課題文で指定がなければ、
天井高は4mとすることが多いと思います。
天井高の指定があったり、
上階のスラブ下げの指示があれば
階高を高くして対応します。
試験においては作図しやすい
500mmピッチで階高を設定することがおすすめです。
階高を決めたら必要な段数を計算します。
階高を蹴上げの寸法で割ることで、必要な段数が計算できます。
実際は試験中に計算する必要はなく、
あとに出てくる階段のパターンを絵で覚える方がよいのですが、
ここではあえてやり方を知るという意味で計算式を記載しておきます。
- 階高4,000の場合:4,000÷160=25段
- 階高4,500の場合:4,500÷160=28.1→29段
- 階高5,000の場合:5,000÷160=31.2→32段
- 階高5,500の場合:5,500÷160=34.3→35段
- 階高6,000の場合:6,000÷160=37.5→38段
この段数を頭の隅にとどめつつ、
利用者用階段全3パターンを見ていきましょう。
利用者用の階段全3パターン
パターン1
まずはもっとも王道パターンです。
利用者用階段は、階高4mの場合7mスパンにぴったりはまります。
7mx7mのグリッドに計画する場合は、
階段室の短辺を4mで計画します。
そうすると残った3mのスペースに
EVシャフトがぴったり納まります。
7mx6mのグリッドに計画する場合は、
階段室とEVシャフトの幅を0.5mずつ縮めて計画します。
パターン2
続いて、パターン1の応用形です。
階高を4mよりも高くする場合に使います。
階段室の外形、見た目はそのままで、
回転数を多くして対応します。
1.5回転にすれば階高6mまで対応できます。
1.5回転を採用する際の注意は、
階により出入口の場所が異なってしまうこと。
作図の際に注意が必要です。
階高4.5m、5mの場合は段数が多くなりすぎるので、
両サイドの線をなくして(段数を減らして)
対応してもよいと思います。
パターン2’
階により出入口の場所を変えたくない、という場合は、
2回転で対応する方法もあります。
注意点は2つ。
- 「2回転」という文字を書き忘れた場合、
段数不足で一発アウトの可能性がある。 - 踊り場の天井高を確保するため、階高は5m以上ほしい。
パターン3
パターン1〜2は階段を7mスパンに計画していました。
パターン3は、どうしても
6mスパンに階段を入れなくてはならない場合の対処法となります。
中央に吹抜けを設け、
ぐるぐる回って上がっていく形式になります。
私はこの階段パターンについては、
極力使わないようにしています。
中央が吹抜けで作図が面倒だからです。
わざわざ面倒な形状にして
時間をロスしたくないですよね。
どうしても6mx6mのグリッドの中に
階段を入れなければならない場合に、
やむを得ず使うくらいかなぁ、と考えています。
管理用の階段
管理用の階段の寸法
続いては、スタッフ用、裏動線用の階段です。
こちらは不特定多数のお客さんが利用する階段ではないので、
建築基準法に定められた寸法をクリアしておけばOK。
バリアフリー法の階段よりも
コンパクトにまとまりますので、
こちらを使ってプランを効率よく進めましょう。
建築基準法において、階段の寸法は、
施行令の第23条第1項に規定されます。
用途や規模により規定は異なりますが、
一般的な用途であれば表の(3)の数値を使用します。
蹴上げ(R:Rise)は20cm以下、踏面(T:Tread)は24cm以上。
必要な段数
利用者用階段と同様、
設定した階高で必要な段数を計算しましょう。
- 階高4,000の場合:4,000÷200=20段
- 階高4,500の場合:4,500÷200=22.5→23段
- 階高5,000の場合:5,000÷200=25段
- 階高5,500の場合:5,500÷200=27.5→28段
- 階高6,000の場合:6,000÷200=30段
それでは、管理用階段も同様にパターン1〜3を見てみましょう。
管理用階段全3パターン
パターン1
最も王道の計画です。
階高が4mの場合、管理用階段は
5mx3mの大きさにぴったり収まります。
パターン2
階高を高くした場合に回転数を増やして対応する計画です。
1.5回転で階高6mまで対応できます。
利用者用階段と同様、
どうしても扉の位置を階で同じにしたい場合は、
2回転で対応します。
ただし2回転にするのであれば階高は5m以上確保して下さい。
パターン3
最後は4mx4mの計画です。
6mスパンの中にエレベーターも入れ込みたい場合に使えます。
中央が吹抜けのため作図は面倒です。
まとめノート
今回は階段の寸法、段数の計算方法と、階段のパターンをまとめました。
階段のパターンはあえて頻出の3パターンに厳選しました。
もちろん他のパターンもたくさんありますし、
知っておけば便利なテクニックもあるとは思うのですが。
私個人的には、今回紹介したパターンで
95%の問題は難なく解けるのではと思っています。
使い回しがきくものに限定し、
ポイントを絞って押さえることで、
効率的に学習いただければと思います。
本日のまとめノートです。
参考URL
コメント
利用者用エレベーター、パターン3
幅の寸法間違えてます。
4メートルのことろが3メートルです。
ご指摘ありがとうございます。
修正致しました。
コメント失礼いたします。
階高4,000の場合:4,000÷160=25段と記載がありますが、パターン1で26段としている理由を教えて頂けませんでしょうか
こんにちは!コメントありがとうございます。
パターン1の階段の段数についてですが、
偶数の段数の方が作図がしやすいため26段としています。
ご指摘の通り、必要段数は25段なので、
正確に作図するのであれば線を1本消して25段とするのが正しいと思いますが、
毎回必要段数を計算するのは頭がこんがらがってしまうので、
私は描きやすい26段で丸暗記して作図していました。
ご参考にして下さい。
ご丁寧に返信いただきありがとうございます。
参考にさせていただきます