こんにちは。20代一級建築士女子のWindyです。
今回は建物や内装の設計者に向けて、「内装の下地不燃が必要となるケース」をまとめた記事となります。
設計の実務をしていると、プロジェクトによっては「間仕切り壁の下地はLGSか木軸か、どっちにしよう…」と迷う場合もありますよね。
そんな時に、法的に下地を不燃にしなければならない条件がわかっていれば、判断がスムーズにできます。
早速ですが、結論をお伝えすると、下地不燃が必要となるケースは次の5パターンです。
- 排煙告示で排煙設備を免除
- 無窓の居室
- 内装制限で竪穴区画を免除
- 内装制限で高層区画を緩和
- 屋内避難階段・特別避難階段
各パターンについてイメージがつかみやすいよう、ざっくり概要をまとめています。
関係する法令の条文番号も記載しておりますので、
- ここ、木下地を使いたいんだけど、法的に問題ないのかな…?
というふうに疑問に思った時のチェックリスト的な使い方をしていただけるんじゃないかと思います。
実務でお困りの際の参考に本記事を活用していただけると嬉しいです!
なるべく間違いがないように努めておりますが、項目の抜け漏れがあったり、法解釈の誤りが生じてしまっている場合もあるかと思います。
本記事はあくまで参考程度にご覧いただき、法規の解釈や審査機関との協議、最終的な判断は各設計者さんで行っていただきますようお願い致します。
ご了承をお願い致します
記事に関して気が付いた点があればコメントでお知らせいただけると嬉しいです!
ケース1.排煙告示で排煙設備を免除
内装の下地不燃が必要となるケースの1つ目は、「排煙告示で排煙設備を免除する場合」です。
どうしても排煙窓を設置できないような場合に、いわゆる「告示1436号」を使って排煙設備の設置を免除する方法があります。
「告示1436号」は使い勝手のいい呪文みたいなもんやな
頻繁に登場するよね
「告示1436号」には排煙設備を設けなくてよいケースについていくつか規定されていますが、
その中でも、居室の排煙設備を免除する方法として次の条文がよく用いられるのではないでしょうか。
居室の排煙設備を免除する要件(告示1436号 四号ヘ(五))
- 100㎡以下の居室
- 壁・天井の下地・仕上げを不燃材料とする
これ以外に、特殊建築物の用途で地階はダメといった要件が色々あるけど、ここでは省略するで
この条文を使って排煙設備を免除しているケースでは、内装の下地を不燃材料とする必要があります。
- 建築基準法施行令 第126条の2(排煙設備)
- 平成12年建設省告示第1436号
ちなみに告示1436号は令和6(2024)年に改正があり、条文追加や条文番号の変更が生じているよ
ケース2.無窓の居室
内装の下地不燃が必要となる可能性があるケースの2つ目は、「無窓の居室の場合」です。
ここでいう「無窓居室」とは、建築基準法第35条の3において定められている無窓居室のことになります。
建築基準法では、採光やら排煙やら各規定ごとに「無窓居室」が定義されているよ~
ほんまややこしいからやめてほしいわ…
無窓居室(建築基準法第35条の3)
- 居室面積の1/20以上の窓がない かつ
- 避難上有効な開口部がない
開口部の寸法など、細かい規定は法令文を確認してな~
上記の「無窓居室」に該当した場合は、主要構造部(=壁や床など)を耐火構造とするか、不燃材料でつくる必要があります。
無窓居室の壁(不燃区画)
- 耐火構造 または
- 不燃材料
この条文はあくまで「主要構造部」に対する規定であり、内装下地に対する規定ではありません。
しかし、居室を構成する壁であれば構造的な壁でなくても、単なる間仕切り壁であっても対象となります。
そのため、内装仕上げの下地にも関係してくる可能性のある規定となっています。
- 建築基準法 第第35条の3(無窓の居室等の主要構造部)
- 建築基準法施行令 第111条(窓その他の開口部を有しない居室等)
ケース3.内装制限で竪穴区画を免除
内装の下地不燃が必要となるケースの3つ目は、「内装制限で竪穴区画を免除する場合」です。
一定の条件に該当する建築物は、階段やエレベーターシャフトの部分、吹抜けの部分といった「竪穴部分」を区画しないといけません。
しかし、この竪穴区画を内装制限により免除する方法があります。
内装制限により竪穴区画を緩和する条件
- 壁・天井の下地・仕上げを不燃材料にする
- 避難階から直上階または直下階に通じる吹抜け等に限る
なお、内装制限により竪穴区画を免除できるのは、上記の通り、竪穴部分が避難階を含めた2層分にまたがる場合のみとなります。
3層以上にわたる吹抜けや、避難階以外の2層吹抜けの竪穴区画は、免除することができません。
- 建築基準法施行令 第112条第11項(竪穴区画)
ケース4.内装制限で高層区画を緩和
内装の下地不燃が必要となるケースの4つ目は、「内装制限で高層区画を緩和する場合」です。
本来、建物の11階以上の部分については100㎡以内に区画する必要があります。
しかし、内装を制限することにより区画すべき面積の大きさを緩和することができます。
高層区画の緩和
- 壁・天井の下地・仕上げを準不燃材料 →200㎡以内
- 壁・天井の下地・仕上げを不燃材料 →500㎡以内
- 建築基準法施行令 第112条第8項・9項(高層区画)
ケース5.屋内避難階段・特別避難階段
内装の下地不燃が必要となるケースの5つ目は、「屋内避難階段や特別避難階段がある場合」です。
これは階段内部の仕上げに関する規定だよ
まずルールの確認ですが、一定規模以上の建物の階段は、避難階段や特別避難階段としなければなりません。
避難階段・特別避難階段としなければならない建物
避難階段
- 地上5階以上または地下2階以下
特別避難階段
- 地上15階以上または地下3階以下
免除してただの直通階段にできる条件もあるけど、ここでは省略するで
そして、この避難階段が屋内階段である場合には、階段内部の仕上げ・下地を不燃材料とする必要があります。
屋内避難階段の仕上げ
- 壁・天井の下地・仕上げを不燃材料とする
また、特別避難階段の場合は、階段室と付室の仕上げ・下地をともに不燃材料とする必要があります。
特別避難階段の仕上げ
- 階段室と付室
- 壁・天井の下地・仕上げを不燃材料とする
- 建築基準法施行令 第123条(避難階段及び特別避難階段の構造)
まとめ
下地不燃が必要となるケース5パターン
- 排煙告示で排煙設備を免除
- 無窓の居室
- 内装制限で竪穴区画を免除
- 内装制限で高層区画を緩和
- 屋内避難階段・特別避難階段
本日は設計士さん向けに、内装の下地に不燃が要求されるケースについてまとめました。
実務で困った時に参考にしていただけますと幸いです。
今回紹介した以外に、「こんなケースもあるよ!」という項目がございましたらコメントでお知らせいただけると嬉しいです!
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