こんにちは!30代一級建築士女子のWindyです。
建築雑誌で見て以来、ずっと気になっていた群馬県前橋市の「白井屋ホテル」。ついに念願叶って、実際に宿泊してきました!
藤本壮介建築設計事務所が手掛けたこのホテルは、丘のような外観や、思わず見上げたくなる大胆な吹抜けなど、建築好きにはたまらない見どころがたくさんあります。

でも、実際に建物の中を歩いてみると、写真で見ていたときには気づかなかった発見もありました。
そこで今回は、建築の意匠設計に携わる一級建築士の私が、実際に宿泊して気になった空間やディテールを写真とともに紹介します!
白井屋ホテルへの宿泊を考えている方はもちろん、藤本壮介氏の建築が好きな方や、建築家のこだわりを設計者目線で知りたい方も、ぜひ最後までご覧ください。
白井屋ホテルは、前橋国際芸術祭2026の期間に合わせて宿泊しました!
芸術祭で見学できる建物は別の記事でまとめていますので、そちらもぜひ合わせてご覧ください(^o^)

複数日にわたって写真を撮影したので、晴れの日と曇りの日の写真が混在してますが、ご了承下さい
白井屋ホテルとは?前橋のまちづくりの起爆剤になったプロジェクト

はじめに、白井屋ホテルの概要についてまとめておきます。
- 所在地:群馬県前橋市本町2-2-15
- 最寄駅:JR両毛線「前橋駅」徒歩約15分
- 完成:2020年
- 設計:藤本壮介建築設計事務所さん
- 施工:冬木工業さん
- 延べ面積:2,565.46㎡
- 構造:RC造
- 規模:地上4階建て
白井屋ホテルの前身は、江戸時代に創業した「白井屋旅館」です。
1970年代にホテル業に転換するも、中心市街地の衰退に伴い、2008年に閉業。
その建物を田中仁財団代表理事の田中仁氏が購入し、藤本壮介氏に設計を依頼したのが始まりだそうです。
プロジェクトは2014年に始まり、なんと完成まで6年半もの歳月がかかったのだとか。

めちゃめちゃ時間かかってるね

時間がかかりすぎて「前橋のサグラダファミリア」って言われてたらしいで
特徴的な土手のような外観は、別のプロジェクトの影響を受けて形づくられた

白井屋ホテルといえば、こんもりとした丘のような外観を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実はこちらは大通りとは反対側、「馬場川通り」側のファサードなんです。
白井屋ホテルさんの公式ホームページで藤本壮介氏のインタビュー記事を読むことができるので、ぜひ読んでいただきたいのですが、
この丘のような外観は、当初は具体的なデザインが決まっていなかったそうです。
そんな中、白井屋ホテル計画と並行して、前橋市内を流れる広瀬川のほとりに岡本太郎氏の≪太陽の鐘≫のパブリックアートを設置する計画が進行していました。

藤本壮介氏がアートの周辺のランドスケープデザインを担当していたんです。
その≪太陽の鐘≫プロジェクトの影響を受けて、白井屋ホテルに提案がなされたのだとか。

ほえ〜

たまたま太陽の鐘プロジェクトがあったから生まれたかたちなんだね

馬場川通りに向かって下っていく地形を活かした、土手のような見た目になっています。
ちなみに、この斜面地の上に植物を定着するのには、特別な技術が使われているんです。

建物にかかる負荷を軽くしたいので、土はできるだけ薄く、重量を軽くしたい。
一方で、植物が根を張るための深さが必要で、傾斜が急なところは土が流れないようにする必要がある。

これらの技術的な課題をクリアするために、(株)大林環境技術研究所さんの「Eソイル」という土が使用されているそうです。

技術力があってこそ叶えられるデザインなんだね
まちに開かれたパブリックなアプローチ空間

土手を上がっていくと、

サウナの小屋があります。

さらに進むと、1階のアプローチ空間に。
馬場川通りから大通りまで、誰でも通り抜けができるようになっています。

大通り側の外観はこんな感じ。
元の既存建物の形を残した見た目です。

馬場川通り側と印象が全然違うね

1階のアプローチ空間は、このように、誰でも通り抜けられるオープンな空間になっています。
これは、前橋の人が集まれるような広場、いわば「前橋のリビング」といえるような公共的空間にすることを意図しているそうです。

確かに、一般的なホテルだと、宿泊者でなければ入口のところで遠慮してしまうというか、立ち入ってはいけない気持ちになりますよね。
一方白井屋ホテルは、歩いていくとどこまでが道で、どこからがホテルの敷地なのかわからないような設えになっています。

いつの間にか敷地内に迷い込んでしまうような、境界のあいまいさが実現されているように感じました。
既存の床躯体を取り除いて生まれた4層吹抜け空間

白井屋ホテルの内観の一番目を引く特徴は、
既存躯体が現しになった大胆な4層吹抜け空間です。

この規模の建物で、ここまで大規模な吹抜けはめずらしいんじゃないかなと思います。
ホテルの事業性という観点では、吹抜けを大きく取るほど客室に使える面積は減ります。そのため、計画によっては収支とのバランスが難しくなることがあります。

しかし、藤本壮介氏が収支の懸念も踏まえつつ吹抜けの案を提案したところ、オーナーである田中氏は快く承諾したのだとか。

なかなか簡単にYESと言いにくいことやんなあ
白井屋ホテルのこの形が実現できたのは、もちろん設計者さんのデザイン力が優れていることは言うまでもないですが、
それに加えて、事業主さんの「インパクトのあることをしたい」「前橋を盛り上げたい」という熱意・決断があったからこそなのだ、と感じました。

階段や渡り廊下が4階から1階まで、縦横無尽に掛けられているので、ひとつとして同じ景色がありません。

階段を昇り降りしていくにつれて空間の印象ががらりと変化していきます。

ここまでたっぷりとした吹抜け空間は希少だね

階段の上がりきった踊り場は、RCの既存躯体にぽんとのせている納め方ですね。

階段のささらのディテールはこんな感じ。

RCの梁からぶら下げて支持しています。

廊下の排煙オペレーターがアートのように照らされています。
様々なデザイナーのコラボレーションにより実現したラウンジ

吹抜けの最下層、1階は、ロビーとラウンジ・レストランです。
ここの設えですごいなと思ったところは、建築設計者だけじゃなくて、様々な協業者の方々のデザインが調和して、空間全体を創出しているというところ。

奥の壁に掛けられているのは1階から4階にわたる長さのテキスタイルで、安藤陽子氏のデザインのもの。
グリーンは「solso」ブランドで知られる(株)DAISHIZENが担当しています。

そして、様々なアーティストのアート作品が空間を彩っています。
吹抜け空間を縦横無尽に走る光るパイプもアート作品で、レアンドロ・エルリッヒ氏の作品。

私が宿泊した際は、夜9時を過ぎると、時間により色が変化していく演出がありました。

これは宿泊者だけが見れるんだって

特別な体験やなあ
あちこちに点在するアート作品

白井屋ホテルの楽しいところは、随所にアート作品が展示されているところ。

客室は一室ごとに異なるデザインで、アーティストの個性が光るつくりとなっています。
私が宿泊したのはデラックスルームという部屋でしたが、謎掛けのようなアートが展示されていました。

別の部屋も見たいから、何度も宿泊したくなっちゃうね

客室に限らず、ロビーや通路にも随所にアートが置かれています。
私が宿泊した時は、アートについての宿泊者向けのガイドツアーが開催されていました。

面白かったので時間が合えばぜひ参加してほしいです!
まとめ

白井屋ホテルの設計者的見どころ!
- 土手のような外観と通り抜けできるアプローチ空間から、前橋まちづくりの発信源のエネルギーを感じる
- 既存躯体と改修工事の新旧の材質が生み出す独自の空間を味わう
- 吹抜けの階段を昇り降りして建物内を探検し、あちこちに展示されているアートを発見する
気になる方はぜひ訪問して、可能であればぜひ宿泊もしてみてほしいです(^o^)
貴重な宿泊体験をできること間違いなしです!


コメント